「あきの夜空には 光がある
私はいつしかその光に魅せられていた。
あきの光には距離があった
冷めた私の此処を照らし、温めてくれる
私に伝わってくるあなたを、私は身近なものだと思っていた
しかし同時に、触れる事すら出来ない程遠くにあることも感じた。
けれど私は見上げることをやめなかった
見上げたあなたは、私がいくら見つめても変わらぬその光を与えてくれた。
私は嬉しかった。私は楽しかった。私は好きになった。
見上げているだけで十分なはずだった。
私はいつしか夜空を見上げたまま歩くようになった
私の心はあきの夜空に手を伸ばしていた
そして、とうとう話かけた。
私の手は秋風に冷やされ、返ってきた
その手は私に私を見つめさせた。
悩んだ
私が少しの我慢をしていれば、この幸せは変わらぬその姿を保ち続けたのではないかと
そして何より、こんな私が喋りかけていいのかと
グシャグシャの頭で、ボロボロの布を被り、壊れた眼鏡をかけたまま、片足を引きずって歩く私に何が言えるのかと。
私は目を背けた
夜空を見たくないからではない
恥ずかしいのか申し訳ないのか、私には下を向くしか思いつかなかった。
私があなたを見つめるとき、あなたにも私が見えている
耐えられなかった
そうして私は逃げようとした。
すぐに後ろへ下がってしまっていた。
それでも、そんな私にも、あなたは優しかった
あなたは私にその温かな手を差し伸べてくれた。
もう、避ける必要などない。
今なら私は、しっかりとあきの夜空を見つめることができる。
私も今、この両手を伸ばしてあなたを求めます。
私は、あなたに出会い、あなたに認めてもらえた私を、誇に思う。
さあ、これから。
たった今から。
そう。
あなたに言っているのです。
不真面目な私も真面目になるときぐらいはあります。