セドリックが私に言う。このままではいけないと。
私はセドリックに言う。夢はここに確かにあると。
目の前の石がどうして石と呼ばれているのか不思議なのだと彼女は言う。いつも僕に見せてくれる温かさを持った笑顔で彼女は言う。
空に浮かぶ雲がどうして雲と呼ばれているのかについて僕たちは考える。幸せという形のないものを噛み締めながら僕たちは考える。
僕を乗せて走る地球が球であることの不思議と感傷的な孤独感に気づく。僕を包む空に終わりがないという絶望的な全能感に震える。
僕は球の外側にいる。 僕は球の内側にいる。
君は球の外側にいる。 君は球の内側にいる。
世界は常に僕の外の何処かに在って、僕は常に世界の中の何処かに居る。
私にセドリックが円を書く。僕は君の外にいると嘆く。
私はセドリックの円を指す。円の外は中になると叫ぶ。
彼女を抱きしめるとそこには愛があった。
愛は彼女の匂いがした。彼女は愛の匂いがした。
抱きしめられた彼女は愛を受け取った。
愛は彼女の匂いではないと言った。彼女は愛ではないと言った。
確かなことは、愛が今そこにあるということ。
確かなことは、彼女が愛ではないということ。
愛こそが全てだ。 しかし部分に過ぎない。
全ては愛なのだ。 だが部分が総体を作る。
一瞬の間に百億の愛がそこら中に生まれ、百億の愛が初めからそこら中に在った。
私を見ているセドリックを私は見ている姿がここにある。
だから私とセドリックはここにいる。
それはつまり私とセドリックの愛がここにあるということ。
私たちは愛を生み愛を抱き愛に包まれ愛によって愛となり愛になる。